核融合発電は危険がいっぱい 隠ぺい体質の開発になっていないか

京都大学発スタートアップ企業の京都フュージョニアリング(株)が核融合実証プラントを使って核融合設備の試験を始めると新聞等で報道された。その実証プラントのイメージが図―1である。

図ー1 核融合実証プラント

この実証プラントでは、核融合を疑似的に再現してエネルギーを発生させ、そのエネルギーを熱に変換。なんらかの熱媒体を加熱し、その熱媒体で水を蒸発させて高圧スチームを作り、スチームタービンに送って発電を行うものである。
しかし、この図で気になることがある。それは「核融合を疑似的に再現する装置」で発生させるエネルギーとは何なのかということである。

核融合は夢のエネルギー源と言われて期待が大きい。水素と言う無尽蔵の原料を使って膨大なエネルギーを生み出す。放射性物質の排出もなく安全であると。しかし、実際に開発されている核融合炉の現実は違っている。

まず、実際の核融合は無尽蔵に存在する水素を使うものではない。水素は水素でも、重水素(ジューテリウム)と三重水素(トリチウム)という希少な資源を反応させるのだ。この融合反応によって高速中性子が発生する。この高速中性子は融合炉を取り巻くリチウムに当たって核反応を起こしてヘリウムとトリチウムになる。このトリチウムは再び燃料として使うことができる。こう言えばとてもよくできたシステムのようにも見える。この関係を図―2に示す。

図ー2 核融合反応経路

しかし、これには問題がある。まず、高速中性子は立派な放射線であり、人体に非常に有害。しかも透過性が高いので、炉の外部に漏れる可能性がある。そして、核融合エネルギーは実は熱ではなくて、この高速中性子と言う形で発生する。だから熱エネルギーに転換する必要があるというわけだ。

つまり、図1に示されたエネルギーとは、言い換えれば「高速中性子線」ということだろう。なぜ、高速中性子線とは言わずにエネルギーと言うのか。また、高速中性子はいろいろな材料に当たると、その材料を劣化させるとともに、放射能を持たせる。

このように核融合は実は放射線を出さない安全な発電方式ではないのだ。中性子線といわずにエネルギーと言っているのは、そのことを指摘されるのがいやなのだろう。

また、エネルギーを熱に転換すると言っているが、これは多分高速中性子をリチウムに当てて、トリチウムを発生させることを兼ねているのだろう。そして加熱されたリチウムを水と熱交換させてスチームを発生させて、スチームタービン発電を行う。

しかし、リチウムは失敗したあの高速増殖炉もんじゅで使われたナトリウム以上に反応性が高く、水と接触しただけで発火、爆発する物質である。そのリチウムを水と熱交換させる?おいおい大丈夫か?

誤解しないでほしいのは、筆者はこの実証実験自体を意味がないと否定しているわけではない。高速中性子を完全に遮蔽し、劣化しにくく、放射能を持ちにくい材料を開発し、リチウムを安全に取り扱うことのできるノウハウをこの実証試験によって確立すれば、核融合発電も実用化できるかもしれない。(個人的には無理だと思うが)

しかしながら、それなら核融合は夢のエネルギー源などというのではなく、危険性があるということも公表し、そのリスクを最小に抑える研究をやっているのですと説明すべきである。高速中性子という危険なものをエネルギーなどと言い換えるようなごまかしをしていい訳がない。都合の悪いことは隠すという態度は却って不審を招くことになる。

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