ガソリンが値上がりしても石油会社が非難されなくなった理由

最近、ガソリンの価格が高くなっている。ニュースでは7年ぶりに162円を超えたと報じられている。値上がりの原因は原油価格の上昇だ。原油価格はWTIやブレントのような基準原油の先物取引で決まる価格であるが、新型コロナが収束して経済の回復が期待されるなか、産油国が増産に慎重になっているためで、これに円安という要因が加わる。
ところで、従来はガソリン価格が上昇すると石油会社が非難されていた。不当に儲けているのではないかと。
ではガソリンの価格の内訳はどうなっているかというと、以下の通りである。(ちょっと古いが2011年の調査)

  原油コスト                     38%
  精製費                    12%
  流通費                    9%
  揮発油税、消費税       41%

このうち、揮発油税と消費税はほぼ一定である。また、精製費と流通費はほとんど調整の余地がない。結局、ガソリン小売価格は原油価格と密接に連動することになる。ガソリン価格が上がっても、石油会社が不当に儲けているわけではない。この関係が理解されたのか、最近ではガソリンの値段が上がっても石油会社が非難されることはあまりなくなった。
しかしながら、過去にはガソリン価格が上がっても、あるいは下がっても、石油会社が非難される時期があった。
1970年代に起こった石油危機以降、原油価格は高いままだったが、1986年に安値に転じた。このとき、原油価格が下がったのに、ガソリン価格が下がらないのはおかしいと、石油会社が非難された。当時、石油会社は90日分の備蓄が義務化されていたから、原油価格が下がっても高いときに買った原油が残っているので、急にガソリンの値段は下げられないのだ。そのため、政府が石油各社を指導して会計基準を従来の総平均法から後入れ先出し法に変更させた。これによって、原油の価格の変動がすぐさまガソリンの価格に結び付くようになった。
ところが1990年8月に湾岸戦争が始まると、今度は逆に原油価格が高騰することになった。当然ながらガソリン価格もすぐに上がる。それを見た当時の大臣が、まだ備蓄が90日もあるのにガソリン価格がすぐに上がるのはケシカランと言い出した。
これにはさすがに石油業界も反発。そのまま後入れ先出方式を維持した。その時々の都合によって会計方式をコロコロ変えるのは禁止されているから当然のことだ。これによって、原油価格が上がったときも下がった時も、すぐにガソリン価格に反映されるシステムが出来上がったのである。
このあとも、しばらくはガソリンの値段が上がると石油会社が非難されることもあったが、最近は原油価格の上下とガソリン価格の上下がリンクしていることが理解されたのであろう。石油会社が非難されることはなくなってきている。
なお、現在は、石油各社の財務会計は国際会計基準に合わせて総平均法に移行しているが、ガソリンの卸価格は従来どおり原油価格に連動して決められているようである。

2021年10月14日

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