Jアラートは正しかった? 北朝鮮のミサイルが本当に北海道に着弾した可能性も

13日午前7時26分。防衛相は北朝鮮から弾道ミサイルが発射されたと発表。その30分後の午前7時55分、政府はJアラートやエムネットを通じて、ミサイルが北海道周辺に落下するとみられるとして、避難を呼びかけた。そして8時16分、当該ミサイルは北海道周辺に落下する恐れはなくなったと発表した。

このアラートを受けて、札幌市内では通勤客などが一時避難し、JRや地下鉄、路面電車が全線で運転を見合わせ。JRの28本の列車が運休や部分運休となったほか、最大40分の遅れが出た。このほか、道内のすべての高速道路がおよそ1時間に渡って通行止めとなっている。

Jアラートは以前にも、ミサイルにほとんど関係のない地域で発令されるなどのミスがあった。今回も結果的に日本領内への落下が起きなかったため、お粗末なアラームシステムとか、もっと確実な情報を出すべきとか、信用を失って「おおかみ少年」になってはいけないなどの批判が相次いでいる。

ミサイル探知システム

実は、今回のミサイルであるが、Jアラート発令前にレーダーから消失している。政府は消失前のミサイルの軌道から、わが国の北海道周辺に落下する恐れがあると判断してアラートを発令したもの。

北朝鮮がミサイルを発射すると、まず米国の偵察衛星が発射時に発生する赤外線を感知。その通報を受けて、自衛隊のイージス艦のレーダーで追跡し、軌道を計算してわが国の領土内に着弾すると判断されれば、警報を発令する。ここまでは自衛隊のミサイル探知システムに何らかのミスや不備があったという話ではないようだ。

その後、実際にはミサイルはレーダーから消えていしまったわけではあるが、このままミサイルが飛び続けているとすれば、北海道周辺に着弾する可能性が高いため、アラートが発令された。しかし、実際にはミサイルがわが国領土内に落下してくることはなかった。だから、騒ぎ過ぎだとか、オオカミ少年だとか非難されているわけである。

しかし、ここで疑問がある。なぜ、ミサイルがレーダーから消えたのか。もしレーダーから消えていなかったらどうなっていたのか。

レーダーから消えたのは自爆したから

弾道ミサイルのロケットモーターが作動している時間は、実はほんの数分しかないということはご存知だろうか。ロケットモーターはほんの数分だけ作動し、燃料が燃え尽きると、あとは慣性力だけでミサイルは飛んでいく。つまり大砲の弾と同じである。大砲の炸薬が一瞬で燃え尽きるのに対して、弾道ミサイルは燃料が数分間燃え続けるという違いしかない。

この数分間でミサイルは軌道が修正されて、目標に向かって飛んでいくことになるが、それを過ぎれば軌道を修正することはできない。まさに大砲の弾と同じ状態になる。だから、燃料が燃え尽きたあと、ミサイルがどこに落下するかはこの時点で決まってしまう。

自衛隊がこの軌道を計算し、それが北海道周辺に落下すると予想したとすれば、これはほぼ正しく北海道周辺に落下することになるだろう。

最近、北朝鮮はミサイルを非常に高い高度まで打ち上げるロフテッド軌道を採用している。そうしなければ飛行距離が長すぎて日本を通り越して、実際にアメリカまで飛んで行ってしまうからだ。

ロフテッド軌道で打ち上げる場合、高度は6000㎞に達する。ちなみに旅客機の高度は10㎞である。そして、この高度まで打ち上げた後、ミサイルは日本海に落下することになるが、日本海の幅は800㎞程度しかない。

だから北朝鮮のミサイルはほぼ真上に打ち上げて、あとはそのまま落ちてくるという感じになる。ここで、もし打ち上げ角度がわずかにでも狂えば、ミサイルは簡単に日本海を飛び越えてしまう。あるいは自国の領土内に落下する可能性もある。

もし、軌道が狂ってしまったらどうするのか。おそらく北のミサイルにも自爆装置が組み込まれているだろうから、このときには、地上から指令電波を送って自爆させることになる。先日、日本でもH3ロケットが打ち上げに失敗したが、このときも自爆させている。

今回の北朝鮮のミサイルも軌道が狂ったので自爆させたのではないだろうか。レーダーから突然消えたのは自爆したためと考えれば納得がいく。もちろん、自衛隊のレーダーが単にミサイルを見失っただけなのかもしれないのだが。

レーダーから消えてなかったらどうなるのか

ではもし、ミサイルがレーダーから消えなかったら、つまり軌道が外れたにも拘わらず北朝鮮が自爆させなかったらどうなるのか。それまでの軌道計算が正しければ、ほぼ間違いなくミサイルは北海道周辺に落下することになる。ミサイルがレーダーから消えたとしても、自爆したわけではなく単にレーダーが見失っただけかもしれない。だからやはりアラートを出して警戒しておくべきだろう。

ただし、実験用のミサイルなら、日本に着弾しても山林や畑のような人口密度の低い地域に落下する可能性が高い。だからそれほど恐れる必要はないのだが、しかし、ミサイルに核爆弾が積まれている場合は、甚大な被害が発生することになる。

自衛隊のレーダーは軌道を確定することはできるが、ミサイルに何が積まれているのかまでは分からない。核爆弾でなくても通常の爆薬や毒ガスが積まれている可能性がないとは言い切れないのだ。

このまま北朝鮮のミサイルがわが国の領土に落下するのならば、自衛隊の迎撃ミサイルSM3で撃墜していたかもしれない。しかし、公海上で外国のミサイルを撃ち落とすことは、国際法上の問題を引き起こすかもしれない。あるいは迎撃ミサイルを打っても外れていたかもしれないが、これはこれで問題である。

北朝鮮は今回のミサイル打ち上げについて、成功したと大々的に報道している。しかし、3段ロケットのうち1段目と2段目は順調に作動したが、3段目については言及がないという。3段目が軌道から逸れてしまったのではないだろうか。