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EU 2035年からCO2排出車の新車販売禁止を決定 どうする日本

2月14日、欧州議会は2035年以降、新規に販売される乗用車と小型商用車(バン)について、CO2排出量を100%削減するという目標を承認した。つまり、2035年以降、EUではCO2を排出する乗用車と小型商用車が販売できなくなる。(年間1,000台未満の新車を販売するメーカーは除外)

では、EUと同様に2050年までにCO2排出量を実質ゼロにするという目標を掲げるわが国はどうするのか。実は、2021年に策定された第6次エネルギー基本計画(以下「基本計画」)には、この欧州議会の決定と同じような表現が含まれている。

基本計画のその部分を抜き書きしてみよう。

「乗用車については、2035年までに新車販売で電動車100%を実現できるよう・・・・包括的な措置を講じる。」
「8t以下の商用車については、2035年までに、新車販売で電動車20~30%、2040年までに、新車販売で電動車と合成燃料等の脱炭素燃料の利用に適した車両を合わせて100%を目指す。」

街の充電スタンド 最近よく見かけるようになってきた

乗用車は2035年に、8t以下の商用車はそれより5年遅いが、いずれもCO2削減対策として新車販売の規制が行われることがうかがえる、しかし、わが国の基本計画はEUの決定と似ているように見えて、よく見るとかなり違っている。

まず、EUの規制はCO2ゼロという目標がはっきりしており、その目標を達成するために2035年にCO2を排出する自動車の新規販売を禁止するという内容である。車の寿命が15年くらいであるから、2050年にCO2排出量をゼロにするためには、その15年前の2035年からCO2排出車の販売を禁止しなければ間に合わないという理屈である。

これに対して、わが国の基本計画ではまずCO2排出量ゼロという目標を明確には掲げていない。そして、乗用車について電動車100%導入というCO2削減手段が目標となっている。ここで注意が必要なのは「電動車」の意味である、基本計画では特に説明もなくサラッと書いてあるが、電動車は電気自動車とは違う。

ここでいう電動車とは、電動モーターで走る車という意味であろう。そうであれば、電動車は電気自動車(EV)だけでなく、バイブリッド車(HV)やプラグインハイブリッド車(PHV)、燃料電池車(FCV)なども含まれることになるが、このうちHVとPHVはガソリンエンジンを積んでいるいるから、CO2排出量をゼロにすることはできない。

一方、電動車ではないが、水素エンジン車や合成燃料車、バイオ燃料車はCO2排出量をゼロに出来る可能性があるにもかかわらず、こちらは2035年以降は販売禁止ということになってしまう。

8t以下の商用車については、乗用車と違って電動車だけでなく合成燃料等の脱炭素燃料の利用も認めるということになっている。電動車以外の手段を認めるのはいいとしても、HVやPHVの使用も認めるというのなら、これもCO2排出量はゼロにはならない。そもそもなぜ乗用車だけ電動車100%にこだわるのだろうか。

わが国の基本計画は、どうもストーリーに一貫性がない。2050年のカーボンニュートラルを達成するのなら、化石燃料を使用した車、つまりHVやPHVの使用は認められないはずだろう。逆に、化石燃料を使わない車なら電動車に限ることはなく、どんな方法でもいいはずである。

それを電動車というCO2を排出する車も排出しない車も一緒くたしてにして100%を目指し、それ以外は認めないという。いったい何をやりたいんだと思ってしまう。

わが国もいずれはEUと同様に化石燃料を使用する車(ガソリン車、ディーゼル車)の規制が必要となるだろう。そうしなければ2050年のカーボンニュートラル目標は達成できないからである。ところが今の基本計画では電動車というあいまいな言葉でお茶を濁しているように見える。

エネルギー基本計画は3年ごとに見直すことになっているから、次回の改定時には、2050年のカーボンニュートラル達成の道筋をきちんと見据えた計画を立ててほしい。

2023年3月2日

【】

H3ロケットの打ち上げ中止は失敗ではない

2月17日に打ち上げ予定であったH3ロケット初号機が直前になって打ち上げが停止した。これについては、打ち上げ中止と報じている報道機関が多いが、一部では中止ではなく、失敗だとする論調もある。

H3ロケットはH2A/Bの後継となる我が国の主力ロケットであり、JXSAと三菱重工業によって開発が進められてきた。今回はその初号機である。打ち上げは当初、今月12日に予定されていたが、準備作業の不具合から13日に変更されたあと、ロケットのシステムに問題が見つかり15日に延期。さらに天候不良が予想されるとして17日に延期されていたものである。

17日当日は、順調に準備が進み、新しく開発されたメインエンジンLE-9が予定どおり打ち上げ6.3秒前に点火され、正常に立ち上がったようである。しかし、その後、補助ロケットが点火される直前(0.4秒前)に異常が検知されたため、補助ロケットへの点火が行われずに、ロケットは打ち上がらなかった。

これについて、ロケットを開発したJAXAは、今回の打ち上げは失敗ではなく、中止と発表している。ところが、記者会見の席上で、ある記者がこれは中止ではなく、失敗だと発言したため、物議を醸している。

この時の、記者会見の質疑応答の概要はだいたい次のようであった。

記者  意図して止めるのを中止という。意図しない中止は失敗ではないのか。
JAXA このような事例では今まで失敗と言ったことはない。ロケットは安全に止まるように設計されている。今回は想定している中での中止なので失敗ではない。
記者 それを失敗と言うのではないか。
JAXA  どのような解釈をするのかは受け止め方の問題であるが、設計の範囲の中で止まっている。安全に止まるように設計されている。
記者 システムで対応できる範囲の異常だったんだけども、起るとは考えてはなかった異常がおきて打ち上げが止まったということか。
JAXA  そのとおりで、健全に止まっているという状態である。
記者 それを一般に失敗と言います。

この記者の発言について、礼を失すると非難する意見が多いが、やはりこれは失敗とすべきだという意見もある。失敗を中止と表現するのは、敗戦を終戦と言い換えるようなもの。誤魔化しだというのである。

もちろん失敗を中止だと誤魔化してはいけないことだ。しかし、今回は誤魔化すために中止と言い張っているわけではなく、どうみても中止というべきであろう。JAXAの技術者としても、これはそもそも失敗の範疇に入らない。失敗じゃないかと言われても、逆に「え?なぜ」と聞き返すような事象だろう。

例えば、線路上に異物があり、それを検知した電車が自動的に急ブレーキをかけて止まったとする。これは失敗だろうか。確かに定時運行ができなくなったので失敗という言い方もできるかもしれないが、一般には失敗とは言わない。むしろシステムが正常に働いて、大きな事故を防いだと評価されるだろう。

今回のH3ロケットの場合もこれと同じである。打ち上げに際しては、ひとつひとつ問題がないか厳重にチェックしていく。そのチェックの過程で問題が見つかれば、カウントダウンを止めて、問題を取り除く。その問題が取り除かれれば、またカウントダウンを継続する。問題が見つかったからと言って、いちいちこれを失敗とは言わない。

ではなぜ直前になって問題が見つかったのか。前もって問題を取り除けばいいじゃないかという反論もあるかもしれないが、直前にならなければ見つからない問題もある。

例えば、H3ロケットの燃料となる液体水素はマイナス253℃、液体酸素はマイナス183℃の超低温である。これを何日も前からロケットに注入しておくわけにはいかないから、打ち上げ数時間前に注入する。

そうすると、ロケット各部の温度が徐々に下がって行って、機器が収縮してひずみやズレが出てくる。もちろん、そのひずみやズレも計算の上でロケットは設計されているが、人間がやることなので、すべてを予測することは不可能である。だから、打ち上げ直前まで問題がないかチェックを行うことになる。

そして問題が発生すれば、カウントダウンを止めて、問題を取り除く。これは失敗とは言わない。人間がやることなので、すべてを完全に設計することなどできはしない。必ず想定外のことが起こる。だからチェックを行って問題が起これば止める。

逆にすべて完全です。間違いは起こりませんと技術者が言ったのなら、その技術者を信用すべきではない。必ず人間はミスをする。だからチェックを行って、問題があれば安全な方向、つまり、今回の場合は打ち上げ中止という方向に進むようにシーケンスが組まれている。フェイルセーフという考え方である。

メインエンジンは点火しても、止めることができるが、補助エンジンは一旦点火してしまえば、止めることができない。だから、補助エンジンに点火する前に安全に止めたのである。ちゃんと理屈は通っている。

記者はそれを失敗だと主張したが、それは予定どおりの打ち上げができなかったら失敗だと言っているのだろう。しかし、打ち上げは見世物ではない。ロケットの目的は衛星を軌道に乗せることだ。時間どおりに打ち上げられなかったから失敗ということではない。

目的を達成するために、少しでも懸念があれば躊躇なくカウントダウンを止めて原因を追究すべきであり、その積み重ねが技術開発である。異常が見つかったのに時間どおりを優先して異常を無視して、打ち上げに成功しても、それは単に運がよかったということで、技術開発にはつながらない。

今回、メインエンジンは点火したものの、安全に作動が停止している状態である。このエンジンは再使用が可能なように設計されているという。原因を究明して対策が取れれば、3月中に再び打ち上げることができるというが、今回は初号機であるから、いろいろな問題が当然起こるだろう。記者から失敗だといわれたからといって焦る必要はない。

2023年2月19日

SAFの原料は廃食用油? クロ現で報道されなかったSAFの本当の原料

2月14日のNHKの報道番組「クローズアップ現代(以下 クロ現)」でSAF(サフ)が取り上げられた。SAFとは持続可能航空燃料(Sustainable Aviation Fuel)の略で、CO2の排出量を80%削減できるジェット機用の燃料である。

原料はてんぷらなどの揚げ物に使ったあとの食用油で、廃食用油といわれる。従来、厄介者とされてきた廃食用油であるが、SAFの原料となることから一気に需要が増加して海外からも買い付けが殺到。引き取り価格もこの1年あまりで3倍に高騰して、今や争奪戦となっている。


一方で、廃食用油を原料とする家畜用飼料が価格が高騰。最近の鶏卵の価格上昇の原因のひとつともなっている。

しかし、廃食用油の量は多くはない。国内の廃食用油を全て集めてSAFを作っても年間35万キロリットル。一方、航空燃料として必要な量は1,300万キロリットルだから、廃食用油だけではとても航空燃料の需要をまかないきれない。

そこで、廃食用油以外の原料として、生ごみや廃プラスチック、藻類、CO2を活用する研究が進んでいる。クロ現の放送は、そういう内容であった。

しかしながら、これでは視聴者は大きな誤解をすることになる。実はSAFの主要原料は廃食用油ではない。生ごみや廃プラスチックなどでももちろんない。

SAFの主原料は植物油。つまりてんぷらなどの揚げ物をする前の植物油。大豆油、ナタネ油、パーム油といった植物油なのである。

番組でも取り上げられていたように、シンガポールには巨大なSAF製造プラントがあるが、その所有者はフィンランドの企業、ネステ社である。この北欧の企業がなぜ東南アジアのシンガポールにプラントを建設したのか。

それは、原料のパーム油が手に入りやすいからである。パーム油はシンガポールの隣国、インドネシアとマレーシアが大産地。この両国のパーム油生産量を合わせるとなんと世界全体の87%を占める。それほどのパーム油の大生産地帯なのである。

ミドリムシ油を原料としてSAFを製造している日本のユーグレナ社も最近、マレーシアに工場建設を検討していると報道された。これもおそらくパーム油を原料として考えているのだろう。

今後、わが国でもSAFの生産プラントが建設されていくであろうが、生産が本格化すれば国内で得られる廃食用油では到底足りないだろう。やはりパーム油などの植物油に頼らざるを得なくなる。

植物油のような食料を燃料の原料として使うのはケシカランという意見もあるが、食料を作るだけが農業ではない。例えば綿花や天然ゴムは食料ではないが、これも農業である。パーム油だって、食料以外に石鹸やシャンプーなどの原料として従来から使われてきた。だから食料を作るのではなく、エネルギーを作る農業があってもいい。ただ、対象とする作物が綿花やゴムの木と違って食料として使われてきた作物であったという話である。

今後、SAFを製造する企業はその原料をどう確保するかが問題となるだろう。自前で植物油の生産まで手掛ける。例えば世界に広がる荒れ地や休耕地、耕作放棄地などを開墾して、油を取れる植物、ナタネ、大豆、パームだけでなくカメリナやジャトロファなど、SAFに特化した油脂植物を育てる。そんなビジネスが展開していくかもしれない。

2023年2月16日

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カーメーカーのホンダが開発に乗り出したSAF 簡単には賛同できない3つの疑問

2月6日、カーメーカーのホンダがSAFの製造に乗り出すと新聞で報じられた。
SAFとは、持続可能航空燃料のこと。石油から作られるジェット燃料とほぼ同じ性状や性能を持ちながら、温室効果ガスの排出量を大幅に抑えることができる燃料である。航空業界は2020年以降、温室効果ガスの排出量を増やしてはいけないとの目標がある。この目標達成のためにSAFは非常に有力な手段とみられている。

温室効果ガスの削減ができない場合、その航空会社は他国への乗り入れを拒否される可能性がある。あるいは市場から炭素排出量を購入しなければならなくなる。このことから今後、SAFの需要は拡大することが約束されている。

また、SAFは基本的に灯油や軽油の代わりに使うことができる。SAFが実用化すれば、トラックやバスなど電気自動車化が困難なディーゼルエンジン車への需要も見込むことができる。ホンダがSAFの開発に乗り出したのはこのような思惑があるからだろう。

もちろん、SAFの開発を進めているのはホンダだけではない。世界中で開発がすすめられており、その原料を何にするか、どうやって製造するかについて、さまざまな方法が提案されている。

では、ホンダの方法はというと、まず、①工場等から排出されるCO2を使って藻を栽培する。②この藻を乾燥させて粉末状にし、③そこからブドウ糖を抽出して、④そのブドウ糖からSAFを製造する。 というものである。

ホンダが開発するSAFの製造工程

しかし、今回の報道については、すんなり受け入れられない、いくつかの疑問がある。この点について紹介したい。

疑問1.本当にカーボンニュートラルなのか
原料となる藻は成長する過程でCO2を吸収しているから、その藻から作られたSAFを燃料として使っても、空気中のCO2を増加させないという理屈である。この関係はカーボンニュートラルといわれている。空気中からCO2を回収することをDAC(Direct Air Capture)というが藻は一種のDACと言えるかもしれない。

しかし、ホンダの方法は空気中のCO2ではなく、工場などで発生したCO2を使うとしている。多分、その方が藻の成長が速いからだろう。しかし、工場から発生したCO2は化石燃料起源である。それを使って製造したSAFはカーボンニュートラルとは認められないかもしれない。

疑問2.乾燥に大きなエネルギーを必要とする
藻は成長が速いので、バイオ燃料の原料として以前から有望視されてきた。しかし、現在まで藻を原料とした燃料が本格的に普及しているとは言い難い。その理由のひとつが乾燥工程で大きなエネルギーを消費することである。その結果、SAFの製造コストが非常に大きなものとなって、実用的でなくなってしまう可能性がある。

疑問3.藻からブドウ糖を抽出できるのか
アメリカにはASTMという規格があり、藻を使った燃料もSAFとして認められている。しかし、この場合、藻から取り出すのは油脂であり、ブドウ糖ではない。ブドウ糖を産出する藻をホンダが独自に開発したのだろうか。

あるいは藻からセルロースを取り出し、これを分解してブドウ糖とすることは可能である。セルロースからブドウ糖を作る技術はアメリカでさんざん研究され、商業プラントまで建設されたが、結局失敗して撤退している。かなり難しい技術なのだ。

もちろん、ここで挙げた疑問のもとは単に新聞から得られた情報だけである。もっと詳しい情報が得られれば、これらの疑問は解消してしまうかもしれないし、そう願っている。ホンダファンのひとりとして、できればホンダにもこの分野で有望な技術を開発していただきたい。

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大阪で公開実験が行われたCO2と水から人工石油を作るという話(ドリーム燃料装置)は本物か

大阪の公園で行われたCO2と水から石油を作るという実験が話題になっています。これは仙台市に本社があるサステナブルエネルギー開発(株)という会社が開発し、ドリーム燃料装置と名付けられたもので、大阪市などの支援を受けて鶴見公園で行われました。

主催者側の説明によると、このプロセスは水とCO2を混合して、特殊な光触媒を使い、少量の紫外線を照射することによってラジカル水というものを作る。このラジカル水に種油と称する石油(軽油など)を混合すると、人工石油ができるといいます。

人工石油は種油と混ざったエマルジョン状態で産出されますが、これを油分と水に分離すると油分が元の種油よりも増えていることから、同社は増えたぶんだけ人工石油ができたと主張しているわけです。

CO2と水から人工石油を作る実験の概要(大阪市のHPより)

鶴見公園の実験では、生成した人工石油を使ってエンジン発電機で発電を行い、その電力で電気自動車を動かすというデモンストレーションを行っています。この実験はマスコミでも報道され、これを見た人からは、「素晴らしい発明」、「地球温暖化防止に貢献する技術だ」、「すぐに実用化してほしい」などの意見が見られました。

この実験については、私のブログ記事とも関連するところがあり、さまざまな方からコメントや意見、問い合わせをいただきました。ここで、大阪で行われた実験について、私の考えを述べたいと思います。

まず、結論から言わせてもらえば、このような方法でCO2と水から石油を作ることはできません。それは科学の大前提から外れてしまうからです。

私たち人類は石油を燃やしてエネルギーを得ています。そのときCO2と水(水蒸気)が出てきます。決してCO2を出したいと思って石油を燃やしているわけではありません。私たちが欲しいのはエネルギーであり、CO2と水は副産物に過ぎません。

この副産物のCO2と水を使って人工石油ができるとすれば、それを燃やしてエネルギーを得ることができるはずです。そして人工石油を燃やせば再びCO2と水が出てきます。それなら、出てきたCO2と水を使って、また人工石油を作ることができるということになるはずです。

これを繰り返せば、私たち人類は無限のエネルギーを手に入れることができることになります。これが本当なら本当に素晴らしいことです。

しかしながら、科学の世界にはエネルギーは増えも減りもしないという大前提があります。これをエネルギー保存則とか熱力学第一法則といいます。つまりエネルギーは勝手に増えたり減ったりはしない、つまり無から有は生じないのです。もし、人工石油でどんどんエネルギーが取り出せるとすれば、そのエネルギーはどこから来るか説明がつきません。

このようにエネルギーがどんどん増えていくシステムを永久機関といい、永久機関は不可能というのが、科学の掟なのです。人工石油のシステムを発明したと称する人たちは、実は自分たちが永久機関を作ろうとしていることに気づいていないのではないでしょうか。

今回の大阪の実験内容については、いろいろな疑問点がありますが、ここでは省略させていただきます。しかし、このような、水から石油を作るという話は昔から出ては消え、消えてはまた出てきますが、いずれも成功したことはありません。

ちなみに、このような科学的にあり得ない話を大阪市のような公共団体が支援をするというのは、いかがなものでしょうか。じつは、大阪市だけでなく、他の自治体でもときどき「こりゃあありえない」と思われる事業を大々的に支援して、結局成果が上がらず、いつの間にかうやむやにされているというような例がいくつもあります。支援するまえに、専門家にちょっと相談すればわかる話だと思います。

※大阪市はHPへの問い合わせで実証の内容には関わっておらず、資金面での支援も行っておりません。と回答している。

ちなみに太平洋戦争中に、水からガソリンを作るという話が持ち上がり、山本五十六海軍大将もだまされたという話があったそうです。今回の大阪の実験を契機に教えていただきました。
https://www.yomiuri.co.jp/fukayomi/20170814-OYT8T50132/

【追記】
この装置は光エネルギーが使われているので、永久機関ではないというコメントをいただきました。本文中にはあまりエネルギーの面から説明しなかったので、誤解を生んだかもしれません。以下に説明しますが、結論から先に言えば、この装置で使われる光エネルギーは非常に僅かなので、石油を5%も10%も生み出すには全然足りないということです。

ドリーム装置内にはUV(40w)とブラックライト(40w)の2本のランプが設置されており、30分間照射してラジカル水を作るとされています。この光エネルギーは40whになり、換算すると0.144MJです。

一方、投入した灯油10リットルに対して5から10%の灯油が増えたということですから、5%増えたとすると、増えた分の灯油のエネルギーは23MJ(46.5MJ/ℓで計算)になります。

つまり、0.144MJの光エネルギーで23MJの石油ができたことになります。光エネルギーを使ったとしても、その100倍以上ものエネルギーを産み出したと言う計算になるわけで、そんなことはありえないということです。

では、ドリーム燃料製造装置の発明者はウソをついているのかということですが、そうではないと思います。ただ、実験には誤差がありますから、もっと精密な実験を行うべきです。さらに完全に独立した機関が全く同じ実験をやって同じ結果がでるかどうかの検証が必要だと思います。

なお、ドリーム燃料はポルシェやENEOSなど世界中で研究されている合成燃料(e-fuel)とは全く別のものです。(2023年8月24日追記)

【追記2】
最近、発明者の大学名誉教授へのインタビューがユーチューブで公開されていましたが、この中で、驚いたことにドリーム燃料製造装置は永久機関だと、発明者がはっきり言っていました。ここまで言い切られると何とも言えません。とても信じられませんが、信じたい人はどうぞ。
参考記事:
ドリーム燃料は永久機関だと発明者が明言 そもそも永久機関とは
どんなに科学が進んでも絶対できない3つのこと 永久機関、超光速移動、タイムマシン、エントロピー   (2023年11月12日追記)

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水道水にベンゼン混入 ENEOSガソリン漏出 ベンゼンってどんなもの?

水道水にベンゼンが混入

昨年(2022年)8月、室蘭市内の住民から水道水に油のにおいがすると通報があり、市が調査したところ、国の水質基準を上回る発がん物質のベンゼンが検出されたという事件が起こった。

その原因について調査したところ、市内のガソリンスタンドから推定2,100ℓのガソリンが漏洩し、水道に混入したことが判明。今年1月、このガソリンスタンドを運営する北海道エネルギー社と元売り会社のENEOSが住民に謝罪と説明会を行った。

この事件で問題となったベンゼンとはどういうものか。また、どうして水道水に混入したのかについて説明したい。

ベンゼンとはなにか

ベンゼンは高校の化学の時間でも習う基本的な有機化学物質のうちの一つである。炭素数は6で、この6個の炭素が環状につながって六角形を形成している。この構造はベンゼン環、いわゆる亀の甲といわれるものだ。

ベンゼンの化学構造

ベンゼン自体が有機溶剤としてつかわれるほか、様々な化学製品の原料となる。例えば、PETボトルや発泡スチロールなどもベンゼンが原料である。ベンゼンは化学業界では、かなりありふれたものなのだ。

ベンゼンは無色透明の液体で、水には溶けない。揮発性があり、引火性があるので、マッチの火を近づけただけで燃える。しかし、特にベンゼンが問題視されるのは、それが人体に非常に有害なものだからだ。

ベンゼンは発がん性があり、遺伝性疾患の原因ともなる。経口で摂取した場合だけでなく、皮膚に着いただけでも体内に吸収されるし、あるいは揮発性があるので蒸気を吸引すれば体内に入ってくる。

体内に入ると、ベンゼンには麻酔作用があるので眠気やめまいを催し、長期に吸引し続けると中枢神経系、造血系に障害を起こす。白血病の原因ともなる。IARC発がん性対象一覧表ではグループⅠ「ヒトに対する発がん性が認めれる」に分類されており、日本の法律では特定化学物質に分類され、取り扱いには様々な制約が設けられている。

と恐ろしげなことを書いたが、実は筆者自身が学生時代には、かなり安直にベンゼンを取り扱っていた経験がある。ベンゼンはさまざまな有機物質を溶解する性質がある。例えば手についたアスファルトは石鹸でもなかなかとれないため、当時筆者はベンゼンで手を洗っていた。そうすると実に簡単にアスファルトが取れるのである。

今から考えると、ずいぶん乱暴なことをしたと思うが、それから50年近く経っても、今のところ幸いにも健康被害はない。ベンゼンは確かに危険な物質であるが、ちょっと手についたから、少し蒸気を吸ったからといって、すぐにがんになるとか、倒れてしまうとか言う物ではない。といってもこのような取り扱いは行うべきではないのはもちろんのことである。

ちなみにベンゼン環を含む化合物は芳香族と言われるが、ベンゼンそのものはよい香りどころか、実に嫌な刺激臭を持っている(ベンゼン環を含むものにはよい香りのものもあり、例えばニトロベンゼンはバニラのような甘い香りを持っている)。

ベンゼンとは以上のような物質である。ではなぜ、こんな危険なものが水道水に混入したのだろうか。

なぜベンゼンが水道水に混入したのか

ベンゼンが問題となったのは、今回だけではない。東京都の築地市場移転でも、移転先の敷地からベンゼンなどの有害物質が検出されて問題となっている。この場合は、移転先が東京ガスの工場跡地であったことが原因だろう。都市ガスは従来は石炭から作られていた。石炭をガス化するときにタールが副製し、この中に高濃度のベンゼンが含まれるからだ。

室蘭の場合、水道水から検出されたベンゼンの出どころは、ガソリンスタンドの地下タンクから漏れ出したガソリンである。ベンゼンはもともと原油にも少量含まれているが、ガソリンのオクタン価を上げるために使われる改質工程でベンゼンが生成する。ベンゼン自体がオクタン価の高い物質である。

また、市販されているガソリンには重油を分解した分解ガソリンが半分程度ブレンドされている。この分解ガソリンにもベンゼンが含まれている。

このため、従来、ガソリンには数%のベンゼンが含まれているのが普通であったが、やはり発がん性やその他の毒性の問題から、石油業界は多大の費用をかけて各製油所にベンゼンの除去装置を導入してきたという経緯がある。それでも完全に取り除かれているわけではなく、1%以下ではあるが少量のベンゼンが現在でもガソリンに含まれている。

ガソリンスタンドは地下タンクを二重構造にするなどして、ガソリンの漏洩を防いでいるはずだが、腐食など何らかの原因によってガソリンがタンクから漏れ出し、地下を汚染したのだろう。

漏洩したガソリンが地下水とともにガソリンスタンドから流れだし、一方、水道管についても破損している箇所があって、そこから水道水にガソリンが混入したのではないだろうか。ニュースではベンゼンが検出されたと騒がれているが、ガソリンそのものが水道水に混入し、そのガソリン成分の中でも特に毒性の高いベンゼンが問題とされたのだろう。

ガソリンタンクからなぜガソリンが漏洩したのか、健康被害はどの程度なのかについては、今後調査が進められるであろう。

ユーグレナ社がマレーシアでバイオ燃料の工場建設を検討 ミドリムシはあきらめたのか?

12月14日、ユーグレナ社はマレーシアのペトロナス社およびイタリアのEni社と共同で、バイオ燃料の製造工場をマレーシアに建設することを検討していると発表した。

ユーグレナ社はミドリムシ(英名ユーグレナ)という微細藻類を栽培して、これを健康食品として販売している会社である。近年、このミドリムシから油分を取り出し、ジェット機やディーゼル機関の燃料とする事業に進出して注目されている。

そして、今回、マレーシアに大規模なバイオ燃料工場を作ることを検討しているという。これはいよいよユーグレナ社はミドリムシバイオ燃料を商業的規模で生産し、世界に打って出ようというのだろうか。

しかし、である。ここで疑問が湧く。なぜマレーシアなのか。それは逆にユーグレナ社がミドリムシをあきらめたことを示していると筆者は考える。

ミドリムシに限らず、微細藻類は他の油糧植物に比べて成長が早く、栽培面積当たりの収率も高い。アメリカのメーン州ほどの面積で微細藻類を栽培すれば、世界中で使われている石油と同じ量の油分が得られるという試算もある。

さらに、ミドリムシは光合成を行うので成長するときには空気中のCO2を吸収するから、燃やしても空気中のCO2濃度を増やさない。地球温暖化防止にもなる地球に優しい燃料である。つまり、ミドリムシ油はいいことずくめなのだ。

ユーグレナ社はミドリムシ油を使って製造したバイオ燃料を「サステオ」と名付け2021年から販売を開始している。その後、航空機やディーゼル機関での試験運用も行って、着々と実績を上げてきた。特に航空機用燃料は、今世界中で注目されている持続可能航空燃料(SAF)の一つとして認められている。

(写真はイメージ)

そして今回のマレーシアでのプラント建設計画である。製造能力は最大12,500バレル/日(約72.5万Kℓ/年)というから、これは本格的な商業生産レベルと言っていいだろう。いよいよ、ユーグレナ社がミドリムシ油バイオ燃料の本格生産に乗り出し、世界に打って出るときが来たのだろうか。

と、ここまでは順調であるように見える。しかしながら問題もある。実はサステオはミドリムシ100%のバイオ燃料ではない。割合は公表されていないが、かなりの量の廃食用油由来のバイオ燃料が混合されているのだ。廃食用油とはてんぷらなのどの調理に使った植物油を回収したものである。

なぜ、ユーグレナ社がミドリムシ油100%のバイオ燃料を使わないかは公表されていないが、多分コストの問題だろう。一方、廃食用油の問題は量である。人間が食べた残りの食用油はいくら集めても、ジェット機が一度に使う大量の燃料とは比べものにならないほど少ない。これでは、事業の拡大は難しいだろう。

今回のマレーシアのプロジェクトであるが、年間65万トンの原料を使用するというが、そんなに大量の廃食用油が得られるとは思えない。ではいよいよミドリムシ油を原料にするのかというと、そうではない。同社のプレスリリースによると「将来的には微細藻類由来の藻油などのバイオマス原料」を使うとある。あくまでも「将来的に」である。

おそらく、このプロジェクトが開始されれば、原料としてパーム油が使われることになるだろう。なぜならマレーシアは世界第2位のパーム油生産国であり、なんと世界のパーム油の3分の1を生産している。マレーシアといえば当然、パーム油である。

パーム油は既にバイオ燃料として大量に使用されており、技術的な問題も少ない。おそらくペトロナスもEniもパーム油を使うことを考えて、このプロジェクトに参加しているだろう。

つまり、ユーグレナ社がマレーシアを選んだのは、ミドリムシをあきらめ、パーム油に切り替えたということを意味しているのではないだろうか。ただし、それが悪いことではない。

ユーグレナ社がバイオ燃料の原料としてコストのかかるミドリムシではなくて、パーム油を選択したとすれば、それは現実的な選択と言えるだろう。せっかくミドリムシ油からバイオ燃料を作る技術を開発してきたのに、それを生かせないのは残念であるが、ここはおとなの判断ということだろう。

2022年12月17日



環境活動家が美術館を攻撃 分かりにくい活動だが…

環境活動家による美術品への攻撃が相次いでいる。美術館に掲げられている展示品にトマトケスープやマッシュポテトを投げつけたり、小麦粉をぶちまけたり、接着剤で手を張り付けたりする。彼らの主張、つまり化石燃料の使用を止めさせたいという主張であるが、それがなぜ美術品への攻撃になるのだろうか。とても分かりづらい。

サルバトール・ムンディ(Wikipediaより)

ところで、この絵をご存知だろうか。サルバトール・ムンディといわれる絵画だ。1500年頃描かれたとされるが、その後行方不明となり、再び現れたのが1958年。オークションに出品され45ポンドの値がついている。当時の貨幣価値は今とは違うと思うが、1ポンド170円で計算すると8,000円弱である。

ところが、この絵。その後、美術鑑定によってモナリザの作者として知られるレオナルド・ダビンチの真筆とされたのだ。そして、2017年のクリスティーズのオークションでは、なんと500億円で落札されたのである。

45ポンドのときも500億円で落札されたときも、一部修復はされているものの同じ絵である。芸術としての価値は同じではないだろうか。にも拘わらず45ポンドの絵画に500億円もの大金をポンと出して購入する人がいるのである。

その一方で、パキスタンでは水害で国土の3分の1が水没して、1200人以上もの死者を出し、アフリカ東部では過去40年で最悪といわれる旱ばつが発生して550万人以上の子供たちが栄養失調に陥っている。

このように水害と干ばつが同時に発生する極端現象は、地球温暖化に伴って今後、ますます頻度が増えてくるとIPCCの報告書は警告している。

地球温暖化と芸術作品。はっきりいって関係ない。美術品を攻撃する活動家のやり方にはとても賛同できないし、かえって環境活動を阻害する恐れもある。しかし、その芸術作品に値段がつき、一般の人たちの常識をはるかに超えた大金が動くというのもまた、異常ではないだろうか。

人間が作り出した環境破壊によって世界中で大きな災害が頻発しているというときに、一方で、絵1枚に小さな国の国家予算にも匹敵する大金を投じる人もいる。

ちなみに、サルバトール・ムンディであるが、クリスティーズで落札されたあと、再び行方不明となっている。アブダビの美術館が購入したことになっているが、実際はサウジアラビアの王子に渡っているという。

地球環境問題の元凶の一つともいえる石油を売って得た巨万の富が、一枚の絵となって、いま王子が所有する豪華なヨットのキャビンの一室を飾っているのだろうか。

2022年11月22日

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走行税の導入は時間の問題 プリペイドカード方式というのはどうだろう

走行税導入は時間の問題

走行税の導入が話題となっている。走行税は自動車にかけられる新たな税金で、その自動車が走った距離に課税される。10月26日に行われた税制調査会の議論の中で浮上したという。

一方、この新たな税金の導入に反対する人も多い。特に公共交通機関の少ない地方生活者や物流業界だ。車が生活の足になっている地方に住む人は当然ながら走行距離が長い。走行距離に比例して税金を取られるのは不公平だという。

あるいは物流業界も当然、走行距離が長い。これに税金をかけられたら、物流コストが高騰するという指摘である。

現在ガソリンには1ℓあたり53.8円のガソリン税が、軽油には32.1円の軽油引取税が課せられている。ガソリン税は本来の税額は28.7円なのだが、道路を作るために必要だということで1974年から暫定的、つまり一時的に上乗せされて今の税額になっている。

ガソリン税が道路の建設や補修のために使われるのなら、一種の道路使用料のようなものと考えれば納得がいく。ただし、現在ガソリン税は、けしからんことに道路の建設や補修以外にも使われているわけだが。

ところが、そのガソリンだが、最近、どんどん販売量が減ってきている。これはハイブリッド車のような燃費のよい自動車が増えてきたことや、少子高齢化によるものであるが、そのため、当然ながらガソリン税の収入も減ってくる。

さらに今後、ガソリンを使わない電気自動車(EV)が増えてくれば、ますますガソリン税の収入は減ってくる。ちなみに2021年に発表された第6次エネルギー基本計画では、2035年にガソリン車の販売を止めることが明記されているのだ。

ガソリン車の販売が禁止されれば、ガソリン税は一気に減りはじめ、そして政府が目標とするカーボンニュートラルが実現する2050年には、ガソリン税や軽油引取税による収入はゼロとなるはずだ。これは政府にとっては大変な減収である。

だから、以前ブログでも書いたように、この状況をそのまま政府が指をくわえてみているとは思えない。きっとEVにも何らかの形でガソリン税相当分の重い税金が課されることになる。そう考えていたが、やはり来たか。思ったより早い。

走行税導入時の問題

ただ、走行税を導入しようとするといろいろな問題がある。
まず、走行税はもちろんEVだけにしてほしい。ガソリン車保有者に走行税とガソリン税の両方が課されるのは不公平である。ただし、プラグインやハイブリッドはどうするのかという問題があるが。

また、車の大きさによって課税率は変えるべきだろう。特に公共交通機関の少ない地方在住者が通勤や買い物などの足として使っている軽自動車や小型車クラスは税率を安く、あまり使用頻度が高くない都市居住者が使う大型乗用車は税率を高くすべきだろう。例えばEVが搭載しているモーターの総ワット数で、税率を変えるとか。

もう一つの問題は、課税対象となる走行距離をどう測るかということである。現在、ガソリン税は石油会社が払う。軽油引取税は販売業者が払う。いずれも小売価格に上乗せされることになるが、税務署としての税額の把握は容易である。

しかし、走行税は車の保有者が直接払うことになる。税務署は走行距離をどうやって把握するのだろうか。

車検の際に距離計を申告して支払うとすれば、その時支払う走行税は非常な高額になってしまうだろう。今問題になっている放置車両がもっと増えることになってしまうかもしれない。

車の距離計の数値がそのまま税務署に送られて、税務署から月々の請求書が届くという話になるのか。あるいはGPSの位置情報から車の走行距離を割り出し、課税するのか。GPSの場合は、自動車の所有者の行動記録がすべて税務署に把握されることになって、気持ちのいい物ではない。

プリペイドカードによる前払い方式はどうだろうか。これは、私のブログを読んでコメント欄に記入された方のアイデアである。

この方式ではコンビニなどでプリペイドカードに走行税を前もってチャージしておき、このカードを挿入しなければEVのスイッチが入らないようにしておく。チャージ金額は走行距離によって減って行くから、ゼロになる前に、またチャージするという方式である。

プリペイドカードの残金がゼロになると車が止まってしまうので、その時の対策を考えておく必要はあるが、いいアイデアだと思う。

ガソリン税や軽油引取税は道路の整備、補修費という意味合いをもつ。EVはガソリンや軽油を使わないから、現在は燃料に関する税金を支払う必要はないが、EVの数が増えていくと道路関連予算が足りなくなってしまうという問題が起こる。

結局、EVにも何らかの課税が必要で、早晩、走行税か何かの新しい税金の仕組みが導入されることになるのは仕方のないことだろう。

2022年11月6日

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ハロウィーン事故(群衆雪崩)からどうやって身を守るか 半身の姿勢で脱出する

20日午後10時ころ、韓国ソウルの繁華街、梨泰院の路地にハロウィーンのイベントで集まった大勢の人たちが折り重なるように倒れ、150人以上が死亡するという大惨事が起こった。このような事故は群衆雪崩と言われ、2022年10月にインドネシアのサッカー試合後の暴動時にも発生しており、2015年にはサウジアラビアのメッカ郊外でも。日本では2001年7月に明石市の歩道橋で起こっている。

このような群衆雪崩は今後も起こる可能性がある。では、このような現場に巻き込まれたら、どうやって身を守ればいいのだろうか。まず第一に人が密集する場所には近づかないことだろう。しかし、いつの間にか群衆に巻き込まれてしまうこともある。

この場合も、危険と感じたらできるだけ早く群衆から抜け出すことである。しかし、ソウルの事故のように狭い路地に体が浮き上がるほど密集した状態では抜け出すことが難しい。

このようなに状態に巻き込まれたときは、半身の姿勢(はんみのしせい)をとることを提案したい。半身の姿勢とは、左足を半歩前に出し、膝を曲げて腰を低くし、上半身を右にねじった姿勢である。(右足を半歩前に出した時は上半身を左にねじる)両手は腰のあたりに置き、やや前かがみになる。

この姿勢で、左肩を人と人の隙間に入れながら進んでいく。群衆の中では、まっすぐ進もうとしても大きな抵抗にあって進めないが、半身の姿勢だと意外に進んでいけるのである。これは船の先がとがっているのと同じで、人に対する面積が狭くなって抵抗が減るためである。こうやって、群衆から脱出する。

半身の姿勢あるいは半身の構えは、分かりやすく言えばボクシングのファイティングポーズだ。半身の姿勢はボクシングだけでなく相撲、合気道で使われ、サッカーでも最近使われるようになってきた。体が安定し、前後に動きやすくなる態勢である。

また、半身の姿勢を取っておれば、群衆が倒れだした時にも身体の重心が低いため倒れにくくなり、倒壊の圧力を受け流すこともできる。また、前かがみの姿勢であれば倒れるとしても前倒れになり、胸や腹などが圧迫されるのを避けて呼吸の確保が容易になるだろう。

いずれにしても、このような群衆の中には入らないように心がけるとともに、群衆に巻き込まれたらできるだけ早く脱出することを心がけたい。

2022年10月31日

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