2月14日、欧州議会は2035年以降、新規に販売される乗用車と小型商用車(バン)について、CO2排出量を100%削減するという目標を承認した。つまり、2035年以降、EUではCO2を排出する乗用車と小型商用車が販売できなくなる。(年間1,000台未満の新車を販売するメーカーは除外)
では、EUと同様に2050年までにCO2排出量を実質ゼロにするという目標を掲げるわが国はどうするのか。実は、2021年に策定された第6次エネルギー基本計画(以下「基本計画」)には、この欧州議会の決定と同じような表現が含まれている。
基本計画のその部分を抜き書きしてみよう。
「乗用車については、2035年までに新車販売で電動車100%を実現できるよう・・・・包括的な措置を講じる。」
「8t以下の商用車については、2035年までに、新車販売で電動車20~30%、2040年までに、新車販売で電動車と合成燃料等の脱炭素燃料の利用に適した車両を合わせて100%を目指す。」
乗用車は2035年に、8t以下の商用車はそれより5年遅いが、いずれもCO2削減対策として新車販売の規制が行われることがうかがえる、しかし、わが国の基本計画はEUの決定と似ているように見えて、よく見るとかなり違っている。
まず、EUの規制はCO2ゼロという目標がはっきりしており、その目標を達成するために2035年にCO2を排出する自動車の新規販売を禁止するという内容である。車の寿命が15年くらいであるから、2050年にCO2排出量をゼロにするためには、その15年前の2035年からCO2排出車の販売を禁止しなければ間に合わないという理屈である。
これに対して、わが国の基本計画ではまずCO2排出量ゼロという目標を明確には掲げていない。そして、乗用車について電動車100%導入というCO2削減手段が目標となっている。ここで注意が必要なのは「電動車」の意味である、基本計画では特に説明もなくサラッと書いてあるが、電動車は電気自動車とは違う。
ここでいう電動車とは、電動モーターで走る車という意味であろう。そうであれば、電動車は電気自動車(EV)だけでなく、バイブリッド車(HV)やプラグインハイブリッド車(PHV)、燃料電池車(FCV)なども含まれることになるが、このうちHVとPHVはガソリンエンジンを積んでいるいるから、CO2排出量をゼロにすることはできない。
一方、電動車ではないが、水素エンジン車や合成燃料車、バイオ燃料車はCO2排出量をゼロに出来る可能性があるにもかかわらず、こちらは2035年以降は販売禁止ということになってしまう。
8t以下の商用車については、乗用車と違って電動車だけでなく合成燃料等の脱炭素燃料の利用も認めるということになっている。電動車以外の手段を認めるのはいいとしても、HVやPHVの使用も認めるというのなら、これもCO2排出量はゼロにはならない。そもそもなぜ乗用車だけ電動車100%にこだわるのだろうか。
わが国の基本計画は、どうもストーリーに一貫性がない。2050年のカーボンニュートラルを達成するのなら、化石燃料を使用した車、つまりHVやPHVの使用は認められないはずだろう。逆に、化石燃料を使わない車なら電動車に限ることはなく、どんな方法でもいいはずである。
それを電動車というCO2を排出する車も排出しない車も一緒くたしてにして100%を目指し、それ以外は認めないという。いったい何をやりたいんだと思ってしまう。
わが国もいずれはEUと同様に化石燃料を使用する車(ガソリン車、ディーゼル車)の規制が必要となるだろう。そうしなければ2050年のカーボンニュートラル目標は達成できないからである。ところが今の基本計画では電動車というあいまいな言葉でお茶を濁しているように見える。
エネルギー基本計画は3年ごとに見直すことになっているから、次回の改定時には、2050年のカーボンニュートラル達成の道筋をきちんと見据えた計画を立ててほしい。
2023年3月2日
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