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夏の置きみやげ ゴーヤの実

今年の夏は本当に暑かったですね。暑いだけでなく、台風がたくさんやってきたり、雨が降り続いたり、梅雨明けが早かったと思ったら後で訂正が入ったり。
科学者たちは慎重なのではっきりとは言いませんが、やはり地球が温暖化して、それによる気候の変動が本格的に出始めているのじゃないでしょうか。

という、一般論はさておき、我が家では夏の間、台所の西日がきついのでゴーヤを植えて日光を遮っております。しかし、今年は暑すぎたのか実が一向になりません。でもいいんです。西日を遮るために植えているのですから。おかげで、ずいぶん助かりました。

ところが、10月になってやや涼しくなってから、ご覧のとおり実が1個だけなりました。それも台所室内に伸びた枝から。「今年はあまり実がならずにすみません。これはこの夏、最後のおみやげです」と言っているようです。

いいえ、そんなことはありません。今年も西日を遮ってくれてありがとう。実はゴーヤチャンプルーにして頂きたいと思います。

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ひやっしーは地球を冷やすことができるのか 世界はもっと進んでいる

「ゴミだと思った二酸化炭素が、実は可能性の塊!“趣味で地球を救う”現役東大生が考えた地球温暖化の解決策がすごい」
FNNプライムオンラインにこのような記事が掲載された。

現在東大生でもある(現在は、東大を退学)村木風海氏が代表理事を務める炭素回収技術研究機構「CRRA(シーラ)」が空気中のCO2を回収してガソリンを作る研究を行っているという話題である。CRRAはすでに空気中からCO2を回収する装置、ひやっしーを開発販売しているが、次のステップとして、このひやっしーで回収されたCO2を使ってガソリンを作る研究を行っているという。

これが成功すれば、空気中のCO2を減らして地球温暖化の解決策となる。画期的なアイデアだということで、最近、この話題をあちこちで見かけるようになった。しかしながら、CO2を空気中から回収して、ガソリンやその他の燃料として使おうという話は随分前からあり、世界中で開発が進められているし、実際にCO2を原料として作られた燃料が製造されている。

実は、今から40年ほど前、CO2による地球温暖化が問題になり始めたころからCO2を回収して燃料にしようという話は色々出ていた。ひやっしーのように、空気中からCO2を回収することまでは経済性を抜きにすれば技術的にはそれほど難しくない。

難しいのは、回収したCO2から燃料を作ることだ。そもそも、我々人類が化石燃料を使うのは、もちろんエネルギーを得たいからだが、その副産物としてCO2が出てくる。そのCO2を回収して燃料にするときには、今度は逆に発生したのと同じ量のエネルギーを消費してしまうというのがエネルギーの法則である。実際にはエネルギーのロスがあるから、発生したエネルギー以上のエネルギーが必要となる。

つまり、CO2から燃料を作ることは可能だが、そのために必要なエネルギーは、製造されたガソリンの持つエネルギーよりも必ず大きくなってしまう。だから、CO2からガソリンを作ろうとすれば、エネルギー的には必ず赤字となる。

その消費するエネルギーを火力発電から得るなら、かえってCO2が増えてしまうので本末転倒。ということで非化石燃料、例えば水力とか、太陽光とか、風力などの再生可能エネルギーから持ってくる必要がある。

世界中の科学者や技術者が様々な方法で、この課題に挑戦しており、海外ではすでに製品が製造されて出荷される段階にまで達している。つまり、CO2からガソリンを作るというアイデア自体は珍しくもなく、今は実証段階に入っている。

CRRAは回収したCO2をスピルリナという植物を使って光合成やアルコール発酵工程プロセスを経てエタノール等に変えてガソリンにするという。スピルリナを育てるのは簡単だが、それをどうやって、より少ないエネルギーでガソリンに変えるのかという話はぜんぜん聞こえてこない。

多分、FNNオンラインの記事を書いた記者は、そういういきさつを知らずに、「地球温暖化の原因となるCO2からガソリンを作ることができるなんて初めて聞いた。これは素晴らしい、これで地球温暖化問題は解決!」と素直に考えたのかもしれない。

しかし既に述べたように、CO2からガソリンなどを作るアイデア自体は昔からあるし、日本を含め、世界中の大学や企業で開発が進められているテーマである。一部ではもう実証段階まで進んでいる。
EVの代わりにポルシェが薦めるe-fuel 実はとんでもないところで作られていた 参照)
下の図はCO2から自動車燃料を作る海外の開発プロジェクトを示している。

日本においても経済産業省が進めているグリーンイノベーションの一環として、ENEOSや出光興産、大阪ガス、古河電工などが参加して開発が大々的に進められている事業である。

グリーンイノベーションのうち合成燃料開発

その中でCRRAが特に優れた成果を出しているとも思えない。空気中のCO2の回収という簡単なところはできているが、もっと難しいガソリン合成のところはアイデア段階にすぎない。

申し訳ないが、もっと成果を出している研究者は日本にもたくさんいる。マスコミはそういう地道な研究を進めて実際に成果を出している事例を紹介しないで、なぜこのような、それほど成果が上がっているとは思えない人だけを取り上げて騒ぐのか。タレント化して(実際、芸能事務所に所属しているようだが)一時的に騒がれても、あとで忘れられてしまうのでは本人のためにもよくないだろうと思う。

(2023年7月2日 一部加筆)

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柔らかくなった柿でジャムを作る

暑かった夏もようやく終わり、だんだん秋らしくなって、八百屋さんの店先には柿が並ぶようになりました。妻も私も柿が大好きなのですが、柿は放っておくとすぐに果肉がぷよぷよに柔らかくなってしまいます。これが好きという方もおられるかもしれませんが、私は嫌い。

ということで、柔らかくなってしまった柿の実を使ってジャムを作ってみました。とっても簡単。

まず、柔らかくなった柿を包丁で4つ割りにして、中身をスプーンで掻き出し、重さを測ります。その重さと同じ重さの砂糖を測り取り、柿と砂糖を鍋に入れて煮ます。基本はそれだけ。時々かき混ぜながら4分ほど煮て、最後にポッカレモンを数滴加え、適当なビンに移します。あとは冷えるのをゆっくり待つだけ。

出来上がった柿ジャム
(きび砂糖をつかっているので少し色が暗いですが、白砂糖を使えばもっと鮮やかな色のジャムができます)

難しいのは煮る時間です。煮過ぎると硬くなり、煮る時間が短いとサラサラなジャムになります。私はスプーンですくって、スプーンの上のジャムが少し盛り上がる程度になったら火を止めます。これが大体4分くらい。少しくらい硬くても柔らかくてもおいしいのは同じですから、私はあまり気にしませんがね。

この方法で、熟れすぎたキウイフルーツや梅酒に使った梅の実、庭に実ったブルーベリー、熟れすぎた梨(※)などをジャムにしてきました。作り方はすべて同じです。

果物を煮るとペクチンという成分が出てきて、これが砂糖と一緒になって三次元構造を構成してゲル化して固まる。これがジャムができる原理なのだそうです。ペクチンはセルロースと同じように糖が重合した細長い分子です。細長いからこれが絡み合って、水分を抱き込んで流動性がなくなる。これがジャムというわけ。
※梨はペクチンが少ないのでしょうか。なかなか固まらないようです

ジャムを作るときには果物に含まれるペクチンと砂糖、それに酸が必要なのだそうです。酸にはレモン汁が使われますが、私は面倒くさいので市販のポッカレモンを使っています。

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ノルドストリーム破壊事件 実は爆発物を使わなくても破壊できる

9月26日、ロシアからバルト海を通ってドイツに天然ガスを輸送する海底パイプライン、ノルドストリームが海底で破壊され、天然ガスが漏れだすという事件が起こっている。

ノルドストリームにはⅠとⅡの2系統があり、それぞれ2本ずつのパイプラインを持っている。そのうち、26日にⅠが2本ともⅡは1本が破壊され、さらに28日には残りの1本も破壊されている。このことから、これは単なる事故ではない。何者かが意図的に破壊したものと考えられている。

問題は、誰が、何のために、どうやってこのような破壊工作を行ったかということである。ザ・タイムズによると、漁船などの船舶から爆発物を搭載した水中ドローンを投下し、ヘリコプターで起爆装置を海中に落とす手法が使われた可能性があるという。

しかし、水中は電波が届かないから、水中ドローンと言っても有線になる。そのため行動範囲が狭く、近くに母船がいる必要がある。起爆装置を海に落としても電波が届かないのにどうやって起爆するのだろうか。

潜水士を使って爆弾を仕掛けるという方法もある。バルト海は比較的浅い海であるが、それでも水深は50mある。この深度はかなりきついし、海上の母船からの支援がなければ海底でパイプラインを見つけることも難しいだろう。できなくはないが、かなり厄介な作業である。

実は、比較的簡単にパイプラインを破壊する方法がある。それは、コンプレッサーを使ってパイプライン内部を高圧にすることだ。

ノルドストリームは世界で最も長い海底パイプラインであり、長さは1200㎞もある。しかも海底パイプラインだから途中に中継地を作ることができない。そのため、パイプラインの入口に強力なコンプレッサーが設備されていて、天然ガスを高圧で押し込んでいるはずなのだ。

高圧の天然ガスは、パイプラインを流れるにしたがって、配管との摩擦によってどんどん圧力が落ちていく。そして目的地のドイツに上陸するときにはほとんど圧力がなくなっている。というか、そのようにコンプレッサーが設計されているはずなのである。

パイプラインの入口付近の天然ガスは超高圧だから、当然、パイプも肉厚で頑丈に作ってある。しかし、出口に近くなって圧力が小さくなれば、それほど頑丈でなくても構わない。つまり、肉厚の薄いパイプが使われている可能性がある。であれば圧力が上がれば簡単に破壊されることになる。

事件当時、どのパイプラインも休止中であり、天然ガスは流れていなかった。この状態でコンプレッサーをフル稼働させれば、パイプラインの中は末端まで入口付近と同じ超高圧になる。(天然ガスが流れていないから摩擦による圧力低下は起こらない)そうなれば、パイプラインの末端近くの肉厚の薄いところが破壊されることになる。

パイプラインが破壊された場所を見ると、パイプラインの出口に近いところ、つまり本来はかなり圧力が低く、パイプの肉厚も薄いと予想されるところで起こっている。また、当時、地質学者が爆発音を観測したというが、パイプが内側から破裂すれば、同じような爆発音がするのではないだろうか。

もし、このようにコンプレッサーを稼働させて、パイプライン内の圧力を上昇させたことが事件の原因とするなら、それを行ったのはロシアということになる。
なお、この説の欠点は、パイプ内の圧力上昇をドイツ側で検知できなかったのかということである。といっても圧力監視をロシア人がやっていたのなら隠してしまうだろが。

以上はあくまでも推定であり、可能性の話をしているに過ぎない。しかし、この方法を使えば、ロシアはわざわざ海の中まで行って爆弾を仕掛ける必要はなく、自国内で破壊工作をすることができる。
これから今回の事件の原因が究明されていくだろうが、ロシア側の工作であった場合は、究明が難しいだろう。

2022年10月1日

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電力不足には原子力も再生可能エネルギーも解決にならない 貯電技術が今後のカギ

9月5日、テレビ朝日系「モーニングショー」で、コメンテーターの玉川徹氏と石原良純氏がエネルギー問題を巡って激論を繰り広げた。

石原は「再生可能エネルギーで日本のエネルギーを賄えるわけがない!」
玉川は「原発の話をしたいと思うんだが、そんなものやったって、日本の中で火山や地震がこんなにある国で安全なんか担保できない」

この二人に限らず、エネルギー問題について、日本の世論は原子力派と再エネ派に分かれているようだ。

今年の夏、電力不足が問題になった。その原因についてある論客は再エネが不足しているからだと言い、ある人は原子力を再稼働すべきだという。岸田総理も今後、原子力発電所を再稼働させるだけでなく、新設についても進めたいと言及している。

しかしながら、みなさん誤解していることだが、原子力や再エネでは、この電力不足は解消できないのだ。

原子力の問題点は出力の調整がほとんどできないということだ。夏場、電力不足が起こったからといって、そのときだけ出力を上げるとか、需要が減ったから出力を下げるとか、そういう操作がほとんどできない。原子力はあくまでもベース電源であって、その発電能力は送電対象地域の一番需要量が少ない時期の量が上限となる。

一方、再エネだが、こちらも調整が効かないという点では原子力と同じである。太陽光なら昼間だけ、風力なら風が吹いている時だけしか発電できないから、これも夏場や冬場の電力不足に細かく対応することができない。

では、需要の増減に対して、実際にはどのように対応しているのか、それは火力発電である。原子力は一定出力で発電し、再エネの発電量は大きく変動する。その発電量と実際の需要のギャップは火力発電の出力増減で調整している。

だから、原子力を増やしても、再エネを増やしても、今夏のような一時的な電力不足には対応できない。調整機能をもった火力発電を充実する必要があるのだ。

この図は日本より再エネ導入が進んでいる米国カリフォルニア州の4月のある日の、発電量推移を電源別に示している。太陽光発電は日の出とともに増加していき、日没とともにゼロとなる。原子力は常に一定の発電量でビクとも動かない。その発電量と需要量の調整を行っているのが天然ガス火力発電で、昼間はできるだけ出力を絞り、太陽光発電がなくなる夜間に出力を増やして対応する。日本でも再エネ導入が進めば、このような発電パターンになって行くだろう。

ところが、火力発電は発電コストが高いという問題がある。従来、再エネこそ高いというイメージであったが、近年は再エネのコストも急激に下がっており、原子力発電並みとなっている。一方、火力については燃料代の高騰によって発電コストが急上昇したため、電力会社としてはできるだけ火力には頼りたくない。その結果、火力がおざなりになっていた。今夏の電力不足はこれが原因だったのだ。

では、今後どうすべきか。火力発電はコストが高いという問題もあるが、政府が2050年を目途に目標を掲げているカーボンニュートラルを達成するためには、いずれ火力発電は縮小していく必要がある。そうなったとき、発電量と需要のギャップをどのように調整していくのかが問題となる。

モーニングショーで玉川氏も指摘していたことだが、電気を貯めておくシステムが必要となるだろう。需給ギャップを埋める役割を担ってきた火力が、今後どんどん縮小していくならば、蓄電あるいは何か別の手段でエネルギーを蓄える機能の充実が必須となる。

断っておくが、再エネを導入した時だけが蓄電機能を必要としているわけではない。原子力を導入した場合でも需要に合わせて出力調整が効かないのだから同様なのだ。

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ウクライナ ザポリージャ原発の本当の恐ろしさ

私の書いた記事がオルタナ誌やヤフーで公開されるようになり、この記事を読まれた方々からコメントや質問をいただくようになりました。これらのコメントや質問は大変役に立つ、ありがたい物ですが、中には私の記事がよく理解されていないのではないかと思われるものもあり、これも私の表現力の拙さであると反省しています。

そのような記事のひとつ「ブレーキが2つでも暴走、原発は根本的に「危険」と断言する理由」として紹介された記事について、つぎのようなコメントをいただきました。

「記事では冷却水をブレーキといっているが、冷却水の働きで中性子を減速して核反応を起こりやすくしているのだからブレーキではなくアクセルである。冷却水がなくなれば核反応は起こりにくくなり、核反応は止まってブレーキとして働く」

お前はそんなことも知らないのかと言わんばかりのコメントでしたが、いえいえそんなことは知っています。確かに、水は中性子を減速して核反応を起こさせるのでアクセルです。しかし、このアクセルを使って実際に原子力発電所をコントロールしているかといえば、そうではありません。

核燃料は冷却水の中に完全に浸かっていて、その冷却水が中性子を減速する働きをしていますが、その量を増減させて核反応をコントロールしているわけではありません。いわば、アクセルを踏みっぱなしの状態なのです。

で、そのままでは原子炉は暴走してしまいますから、制御棒で中性子の量をコントロールし、発生した熱を冷却水で運び去っているわけです。コメントのように冷却水は核反応を抑えるブレーキとして働いているわけではありませんが、発電所というシステムが暴走しないように実質的にブレーキとして働いているということをこの記事の中では指摘しているわけです。

火力発電所なら、燃やす燃料の量によって、出力をコントロールすることができるわけですが、原子力発電所の場合は、燃料と減速材が余剰に充填されていて、その量を調整することをしていません。

だから、その出力は減速材で調整し、さらに発生した熱で原子炉が過熱しないように冷却水で冷却しているのです。つまり、アクセルをいっぱいに踏みながら、同時にブレーキを踏んで速度をコントロールする仕組みになっているわけです。

原子力発電所の放射能漏れや核廃棄物の処分の問題についてはいろいろと議論されていますが、原子力発電所の運転特性について解説したものはあまりみかけません。

この記事では核反応そのものではなく、核反応で発生したエネルギーを発電に結びつける原子力発電所の制御について、常に暴走の危険があり、誰かが常にブレーキを踏んでいなければならないという特殊な制御を行っているという危険性を指摘しているのです。

数日前から、欧州最大といわれるウクライナのザポリージャ原発に砲撃やミサイル攻撃か行われていると報道されています。これが火力や水力発電所なら、運転員はさっさと退去して発電所は放棄してしまえばいいこと。発電所は勝手に止まってくれるでしょう。

しかし、原子力発電所はそうではありません。常に誰がブレーキをかけていなければならないのです。特に冷却水を喪失すれば核反応自体は停止に向かいますが、核燃料内の放射性崩壊によって熱が発生し続けます。その結果、炉内が熱で溶解し、また水素爆発を起こして、放射性物質を広範囲にまき散らしてしまうでしょう。

そうなれば、おそらく半径数10km、下手すれば100㎞以内にはロシア軍も、ウクライナ軍も、住民もだれも立ち入ることができなくなる可能性があるのです。

原子力発電所の最大の問題点はこのような大災害につながる危険性をはらみながら、常に誰かがブレーキを踏み続けなければ暴走してしまうという運転方法を取っているということです。

その結果、ザポリージャ発電所は、そこが戦場になってしまったにも拘らず、運転員は避難することができません。命をかけて操業を維持しなければ、大災害に結び付いてしまうのです。これがザポリージャ発電所の置かれた状況なのです。

2022年8月18日

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西部バスが再生可能ディーゼル燃料を導入 EVとは違うもうひとつの道

西部バスが再生可能ディーゼル燃料を導入し、7月14日より営業運行を開始すると発表した。CO2の排出量を約9割削減できるという。今回は、この燃料について解説したい。

西武バスが導入するのはフィンランドのネステ社が開発したNeste MY Renewable Diesel®と呼ばれるバイオ燃料である。伊藤忠商事がネステ社と日本向け輸入契約を締結、伊藤忠エネクスが国内の輸送および給油を担当する。

原料は植物油である。植物は成長過程で空気中からCO2を吸収しているから、この燃料を使っても、発生したCO2は植物が吸収したCO2の範囲内である。よって空気中のCO2濃度を増やさない。ネステ社によれば、石油から作られたディーゼル軽油と比較してCO2の発生量を75%から95%抑えることができるという。

植物油を使ったディーゼル燃料は従来から製造、販売されてきた。その製法は植物油にメタノールを反応させるもので、FAME(脂肪酸メチルエステル)とよばれる。これは第一世代のバイオディーゼルだ。

これに対してネステ社の燃料は水素を使って植物油を分解したものでHVO(水素処理植物油)と呼ばれる。これは第二世代である。

FAMEにしてもHVOにしても従来のディーゼル軽油の代替として使われるわけであるが、一般に代替品というのはもともとの製品に比べて品質が劣るという印象があるだろう。しかしHVOに限ってはそうではない。むしろHVOは本家を凌駕する品質を誇っているのだ。

下の表に、HVO、FAME、一般軽油の品質を比較してまとめてみた。〇は良好、◎優れている、△はやや劣る、×は劣るということを意味している。


現在、使われている一般軽油はもちろんJIS規格には合格しているのだが、硫黄分や芳香族分がやや多く、これが黒煙やPMの原因となる。石油系軽油の欠点のひとつである。

FAMEについては、酸化安定性が低いのが最大の弱点。貯蔵中に変質してしまうのだ。さらに原料として天然ガスから作られたメタノールを使っているので、必ずしも完全な再生可能な燃料とは言えないし、酸素を含むので燃費が悪いという欠点もある。

これに対してHVOはこの表に掲げたすべての品質項目が良好であるうえ、特にディーゼル燃料として重要なセタン価が現行の軽油よりかなり高い。また、硫黄分や芳香族分が少ないから、排ガスの改善も期待される。

試乗会に出席した記者によると、軽油特有のツンとした匂いが軽減され、排ガスも軽油と比べて不快な匂いが少ないと言うが、これは硫黄分や芳香族分が少ないから当然のことであろう。

政府は、2035年までに新規販売される乗用車については全て電動にする方針を打ち出しているが、バスやトラックについては、まだそこまで踏み込んでいない。これは大型車については電動化が難しいからだろう。ではどうするか。バスやトラックの脱炭素化については、EVではなく、HVOのようなクリーンなバイオ燃料が今後の有力な候補になるかもしれない。

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