いまのところ日本では、あまり電気自動車(EV)が普及しているわけではないが、世界ではEV化が着実に進んでいる。昨年(2025年)、世界で売られた新車(乗用車)の4台に1台がEVだったという。
今後、EUはCO2排出量規制をさらに厳しくする予定であるし、今や世界一の自動車販売国となった中国も政策的にEV化を進めている。また中国から輸出されるEVも増えている。ということで今後、世界の乗用車のEV比率は更に高まるだろうし、その影響は日本にも波及するだろう。
EVの動力源はもちろん電気であり、ガソリンではない。であれば日本でもEVが普及すればガソリンスタンドが閉鎖され、これに代わって充電ステーションなるものが建設されるのだろうか。とすれば新たに建設される充電ステーションは新しいビジネスになるかもしれないと考えてみた。
かつて、高度成長期には日本各地でガソリンスタンドが次々に建設されていった。城山三郎の小説「うまい話あり」ではガソリンスタンドを開設した事業者の姿が描かれている。確かに、当時はガソリンスタンド経営が「うまい話」だったのかもしれない。であれば、今後EVが普及するのなら充電ステーションも「うまい話」、つまりビジネスチャンスになるかもしれないと考える人もいるだろう。
しかし、よく考えてみれば話はそれほどうまくはない。なぜならEVが普及すれば、充電ステーションがガソリンスタンドにとって代わるというほど単純な話ではないからだ。ガソリン車ならその燃料となるガソリンを補給するために定期的にガソリンスタンドを訪れなければならない。だが、EVも同じように充電ステーション通わなければならないかというと、そうはならないからだ。
なぜなら乗用車型のEVなら自宅で充電できる。また、電動バスや電動トラックのような業務用EVならバスやトラック置場がどこかあるはずで、ここで充電できる。わざわざ充電ステーションに行く必要はない。
マンションのような集合住宅に住んでいる人はどうするのかというと、車を購入した人はEVに限らず、必ずマンション敷地内か月極駐車場などに駐車場を確保しているはずである。道端や空き地に勝手に駐車しておくというのは許されない。
このようなマンション敷地内の駐車場や月極駐車場などでも将来は充電可能となると予想される。そうしなければ、だれもそんな駐車場を借りなくなるからだ。つまりEVの場合は原則として自宅あるいは事業所で充電することになる。
では充電ステーションはどんな使い方をされるかというと、旅行や運送などで自宅や事業所から遠く離れたところまで移動した場合に主に使われることになるだろう。従って、充電ステーションはガソリンスタンドのように近隣の客がひっきりなしに訪れるという施設ではない。つまり集客数が限られることになる。
しかし、ガソリンスタンドの建設には多大な費用がかかる。地下タンクや販売室、キャノピーなどを建設しなければならないし、従業員を雇う必要がある。そもそもガソリンスタンドを設置する広い土地を確保しなければならない。ガソリンスタンドを1か所建設するには数千万円から億単位の資金が必要となるだろう。
では充電ステーションどうかというと、ガソリンスタンドのような大掛かりな設備は必要なく、基本的に充電器と課金のためのカード読み取り機があればいい。土地も車が1台停車できる広さを確保できればいい。
顧客は自分で充電器からコードを引っ張ってきてコネクターをEVに繋いで充電ボタンを押せばいい。もちろんその前に支払い用のカードを読み取らせる必要があるのだが。充電は顧客が自ら行うから従業員を雇う必要はない。充電ステーションは電気の自動販売機のようなものと考えていいだろう。
充電ステーションの設置費用については普通充電器なら40万から70万円、急速充電器の場合は約600~700万円以上となっている(EVStartBizのHPより)。急速充電器は少々お高いが、それでもガソリンスタンドに比べれば、格段に安い。
つまり、ガソリンスタンドは一定数の来客が確保できるが、その建設費用も高いし維持費も高い。一方、充電ステーションはガソリンスタンドほどの来客は望めないが、その設置費用はすこぶる安い。
ガソリンスタンドは費用が掛かるから、過疎化によって顧客が減ってしまえば廃業せざるを得ないが、充電ステーションはそもそも設置費用が格段に安いので、一旦設置してしまえば、思ったように収益が上がらなくても、そのまま放っておくことになるかもしれない。
ということで、充電ステーションは現在日本中ですでに29,000か所もあるという。ガソリンスタンドの数が27,000軒だから、すでに数の上では充電ステーションの方が多い。さらにガソリンスタンドの数は現在、減りつつある。
ただし、充電ステーションの中には無料で充電させるものも多い。これは役所や公園などに設置されてEVの普及効果を狙ったものやEVディーラーが顧客サービスとして行っているものなどがあり、充電ステーション自体での収益を狙ったものではない。このような充電ステーションはビジネスというより便利施設と言った方がいいのかもしれない。
ただ、今後日本でもEVが普及していくのなら、充電ステーションがビジネスとなる可能性はある。例えばホテルなどの宿泊施設では宿泊客用の駐車場を持っているところが多いが、今後はホテル駐車場で充電ステーションを設置するところが増えてくるだろう。そうしなければ宿泊客を呼べないからだ。
そういう所に充電ステーションを設置させてもらい、宿泊客を相手に電気を売る。そんなビジネスもあるのではないだろうか。ホテル側としても助かるし、EVで旅行する宿泊客も助かる。ビジネスをする側も一定数の利用客を確保できるし、駐車スペースを負担する必要もない。三方一両得のビジネスとなる。
これは、例えば、ショッピングセンターやコンビニなどでも成立する。というより一般向けの駐車場を持っているところならどこでも成り立つビジネスモデルである。
日本でEVが普及しない理由として、充電ステーションがないことを挙げる人も多いが、まず、EVは自宅で充電するのが原則であるから買い物や通勤など近場の利用なら充電ステーションはいらない。
充電ステーションは遠くに行くときに必要となるが、あまり目立たないものの、すでに多数の充電ステーションが設置されている。さらに、今後は一般の駐車場には充電ステーションがほぼ必ずあるといる状態になっていくのではないだろうか。
EV向け充電ステーションビジネスはうまい話なのだろうか 三方一両得のビジネスを提案
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